3月19日=ミュージックの日に観たい映画『セッション』

ドラマ・コメディ

 今日3/19はミュージックの日です。音楽の素晴らしさを伝えることを目的とした記念日です。音楽家の労働団体である日本音楽家ユニオンが1991年に制定しました。そんな今日観たいおすすめ映画は『セッション』です!

あらすじ

 世界的ジャズドラマーを目指して名門音楽学校に入学したニーマンは、伝説の教師と言われるフレッチャーの指導を受けることに。ここで成功すれば音楽家として成功することができると期待したニーマンだったが、待ち受けていたのは、天才を生み出すことに取り憑かれたフレッチャーの常軌を逸した厳しいレッスンだった。常に完璧を求めるフレッチャーは容赦ない罵声を浴びせ、ニーマンの精神は次第に追い詰められていく。(映画.comより)

見どころ

 スポ根(スポーツ根性もの)という作品ジャンルがあるが、本作はさしずめジャズ根(ジャズ根性もの)と言える作品だ。「スポ根もの」は、その字面(じづら)同様に、どこか垢抜けない作風になりがちだ。しかし本作はテーマを『ジャズドラム』にすることで、最高に洗練されたオシャレ映画に仕上がっている。

 映画の入り方からしてカッコイイ!真っ暗な画面からジャズドラムの音だけが聞こえる。やがて遠くに遮二無二ドラムを叩き続ける主人公ニーマンが映り、ドラム音に合わせ段々とカメラが寄っていく・・・いや、カッコヨすぎやしねぇか!(この衝撃はカゲヤマの漫才「キモすぎやしねぇか!」のニュアンスでお届けしたい。)

 アカデミー賞ほか数々の映画賞で助演男優賞を受賞したJ・K・シモンズ演じる講師フレッチャーは、俗に言う「ふてほど!(不意適切にもほどがある)」の極みである。汚物のような罵詈雑言を濁流のごとく吐き続ける。以下ぽめシネ的『フレッチャー罵詈雑言ベスト3』をお楽しみください。

  • 「おいデブ!下を向くな!チョコバーは落ちてないぞ!こっちを見ろ!」
  • 「おはえは存在価値のかけらもないオカマ唇のクズ野郎だ!」
  • 「次はアイルランドのイモ兄ちゃんだ。お前童話に出てくる間抜けな妖精にそっくりだな」

 デイミアン・チャゼル監督が高校時代に厳しい指導者にジャズドラムのレッスンを受けていた実体験から着想を得ており、故に鬼畜教師フレッチャーのリアリティは凄まじい。

 もう一点、テーマを『ジャズドラム』に選んだ秀逸な点は、ジャズは素人が聞いてもイマイチ分からないことだ。「スポ根もの」であれば、1年前にコテンパンにやられたチームにリベンジを果たし「俺達こんなに強くなっていたのか・・・先生は間違っていなかった(涙)」てな具合で、主人公の成長や才能・先生の指導法の正しさを「試合結果」という分かりやすい形で観客に示してくれる。

 しかしジャズだと主人公ニーマンにドラムの才能があるのか?成長しているのか?素人では音を聞いてもわからない。レッスン中にフレッチャーに「お前のドラムはテンポがずれている。速いか?遅いか?分かるか!」と叱責される一幕で、ニーマンは自分のドラムが早いのか?遅いのか?分からない!そして我々観客もわからない!教師フレッチャーについても同様で、指導方法が正しいのか?この人について行っていいのか?どんどん分からなくなっていく・・・アーティストという明快な正解のない世界をさまようニーマンの暗中模索の心理状態を追体験させられる。

 そして本作のラスト。(ネタバレを防止のためふわっと話すが)ニーマンはフレッチャーに「お前には才能がない!」とはっきりと宣告される。絶望するニーマンだが、虐げられ続けた反骨芯から完全に「覚醒」する。「アーティストたるもの才能を否定されることを恐れるな!『お前には才能がない!』と言われてからが本当のスタートなんだ!」という、ニーマンを含め「自分に才能があるのか?ないのか?」悩み動けずにいるすべての人々への、監督からの最高にロックなメッセージ(ジャズ映画だが…)なのかもしれない。

3月19日=ミュージックの日にワンダフルなひとときを!

スタッフ&キャスト

スタッフ・キャスト

監督=デイミアン・チャゼル

アンドリュー・ニーマン=マイルズ・テラー

フレッチャー=J・K・シモンズ

ニコル=メリッサ・ブノワ

ジム・ニーマン=ポール・ライザー

受賞歴

第87回(2014)アカデミー賞助演男優賞「J・K・シモンズ」

第87回(2014)アカデミー賞録音賞

第87回(2014)アカデミー賞編集賞

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